平成23年東北地方太平洋沖地震による浦安埋立地の被害
 3月31日、浦安の被害の状況を見に行ってきました。地震から20日を経過しているため、復旧箇所も多かったのですが、依然、地面の亀裂や段差などがそのまま残っているところも多数ありました。とても復旧が間に合わない、と言った感じです。
 とくに一戸建て住宅の被害が大きく、埋立地における住宅開発のあり方を考えさせられました。古い埋立地の中町、新しい埋立地の新町、ともに一戸建て住宅の被害がみられました。その多くは建物が傾いだり、一部陥没して破損するなど、基礎部が液状化によって動いたことによるものでした。
 一方、集合住宅は建物そのものはほとんど被害を受けていませんが、建物とまわりの地面との境界部でずれや、亀裂が多くみられました。また、道路と歩道の境界部で段差や亀裂を生じていました。長時間かけて転圧されている道路面に対し、歩道部分は表面を舗装しただけのようで、表面が波打ったり、亀裂を生じています。また、浮力によりマンホールが浮かび上がり、竹の子のように突き出ていました。
 
 
 写真撮影地点位置図
【P-1】
鉄筋3階建て建物の抜け上がり。道路を含め、周辺が均等に沈んだものと思われる。落差は30〜40cm程度。

被災前の状況(GoogleMap Streetview)
【P-2】
P-1の左端から右端方向を撮影。左端は、水道のメーターボックス。
【P-3】
浦安は山本周五郎の「青べか物語」に出てくる漁師町の「元町」、第1期海面埋立事業で誕生した京葉線の南北に格子状に並ぶ「中町」、第2期海面埋立事業で最後に誕生した、海沿いの高層マンション群に代表される「新町」に分けられる。この堤防は中町と新町を区切る旧堤防。右側が中町、左側が新町。
堤防に沿って延びる道路の堤防側に亀裂や段差が生じている。堤防の左側では液状化によって大量の砂が噴き出した。おそらく、堤防の下の地層が液状化により流動化し、堤防が荷重によって若干沈下したため引きずられて亀裂を生じたものと推定される。
ちなみに、埋立地ではない「元町」は三角州からなり、このような液状化災害はほとんど出ていないという。

被災前の状況(GoogleMap Streetview)
【P-4】
海岸部の盛土の沈下によって生じた亀裂。亀裂から水が流れ出ているが、盛土で、しかもこの高さで地下水が自噴することは考えにくい。どこかで水道管の破裂かつなぎ目の破損によって水が漏れている可能性がある。海岸の堤防そのものには大きな被害はなかった。
【P-5】
老人ホームの玄関へ続く道路と車道との境界に出来た段差。 車道側が沈下したものである。この老人ホームは新しい建築物であり、建物そのものの被害はあまりないが、液状化による泥の噴出や、建物と周辺地盤との境界部の破損など、かなりの被害を受けていた。
【P-6】
新町の海沿いにある県立浦安南高校の校舎。周辺の地盤が沈下したため段差が生じた。手前(校舎右側)から奥(校舎左側)にかけて段差が大きくなっている。 同高校は被災によって上下水道が使用できなくなり、4月の新学期から県立船橋旭高校へ半年ほど移転するとのこと。


このような基礎がしっかりしている建物は、地震時に周辺地盤とは異なる動きをするため、このような亀裂を生じる。下の動画参照。

液状化で船のように揺れて見える建物(youtube)】
【P-7】
浦安南高校西側の空き地に出現した泥火山。きれいな円錐形を呈し、吹き出た水が穿った火口瀬が手前に形成されている(直径4〜5m、高さ30〜40cm程度)。この周辺に数個観察されたが、その中ではもっとも大きなもの。 
【P-8】
浦安南高校西側の空き地に出現したクラック(幅20〜40cm、長さ20〜30m程度)
 
【P-9】
明海大学西側道路歩道のマンホール抜け上がり。1m程度飛び出しており、周辺が沈下したとは到底思えない。マンホール自体空洞のコンクリート管であり、浮力を受けて浮かび上がったものであろう。周辺には夥しい噴砂の跡がみられた。 
今回の災害で浦安市でもっとも大きな被害は上下水道の破損であろう。地中に埋設しているだけで、液状化がおこれば勝手に動き出すため、ひとたまりもない。


被災前の様子(Google Map StreetView)
【P-10】
イトーヨーカドーの玄関に出来た段差の修復工事。建物まわりの地盤が沈下したことにより50〜70cm程度の段差を生じた。被災前の写真を見ればわかるが、もともと建物エントランスとほど間にはほとんど比高はなかった。

被災前の様子(Google Map StreetView)
【P-11】
向かって右側に傾いた歩道。車道は左側。 かなりの勾配であり、右側には堆積した砂泥が残っていた残っていた。
この泥の上面(堆積面)が水平面である。
おそらく、地盤が比較的強固な道路側に対して、建物と道路の間の歩道部は、地盤が締め固めも弱く、徐々に沈下し、そのあとに噴出した泥が堆積したものであろう。


被災前の様子(Google Map StreetView)
【P-12】
建物の抜け上がりのため、上下に引っ張られて切断した配水管。 比較的簡易な施設ではこのようにライフラインが破損した例が多いと思われる。壁の下側、汚れている20〜30cmの部分が地中にあったものと推定される。
【P-13】
波打っている歩道。この付近に集中しており、締め固め不足など、何らかの原因があるものと推定される。

被災前の状況(GoogleMap Streetview)
【P-14】
 1階部分のベランダが破損したもの。ベランダの下の地盤が液状化によって流動して、ベランダの重さに耐えきれず、落ちたものであろう。2階以上のベランダにはなんの損傷もないことから、ベランダと建物の本体を固定することはせず、地面の上に置いただけの構造らしい。
【P-15】
子ども達の両側に見える黒い棒状のものは、半円形の腰掛けのような遊具だったらしい(被災前の様子参照)。おそらく、コンクリート基礎に固定されていたと思われるが、液状化によって噴出した砂に埋まってしまったものだろう。元の高さは、子どもの胸くらいだった。
子供は強い。以前の遊び場が消えても、新たな遊び場ができ、元気に遊んでいる。こっちのほうが楽しいようだ。

被災前の様子(Google Map StreetView)
【P-16】
建物が傾いたため閉店中の某コンビニ。このコンビニの前で液状化による噴出があった。
(下のyoutube動画を参照のこと)。 

【液状化が起こる瞬間(youtube)】
コンビニ前の道路で地震直後、液状化により泥水が噴き出す様子がビデオを撮影されている。泥水が噴き出す前に歩道側と建物敷地側の地面が大きくずれている様子がわかります。こういう映像は見たことがありません。
【P-17】
千鳥地区の幹線道路脇の歩道が50cm程度、盛り上がっている。歩道が浮かび上がったというより、歩道の真ん中が盛り上がったような形状を呈している。おそらく、地震時に強い力で道路側と建物側から押され、盛り上がったものと推定される。
【P-18】 
ここでは80cm程度、歩道側が盛り上がっている。排水工の蓋枠が歩道側地面につられて変形している。被災前の様子と比較するとよく分かる。


被災前の様子(Google Map StreetView)
【P-19】
盛り上がった歩道と、弛んだ電線、傾いた電柱。
奥の電線が大きくたわんでおり、電線電柱間の距離が短くなったことを示している。奥の電柱は若干斜めになってはいるが、電線の緩みの原因は、電柱の沈み込みによるものであろう。その証拠に、電柱の中ほどに付設されている電話線が街路樹の上に垂れ下がっており、その高さが明らかに下がったことを示している。